九州の加野炭坑で落盤事故が福太郎が大泣き・親分が穴の中に?
あさが来た・大爆発が起きたと早馬を走らせてきた福太郎、真っ黒な顔で涙でぐしょぐしょです
新次郎があさに釘を刺した時に店の方が騒々しくなりうめが廊下を慌ただしく小走りしている
おあさ様えらい事だす、炭坑で、九州の加野炭坑で落盤事故が起きたて
なんやて!
あさは茫然として腰がぬけたようになり身体にムチうつようにして部屋を出ました
店では榮三郎や雁助など店の者立ちが不安げな顔で集まっています
入り口近くには福太郎が肩で大きく息をしながら水を飲んでいます
一刻も早くあさに知らせなくては成らないと亀助に頼まれて福太郎はほとんど飲まず食わずで九州から早馬を飛ばしてきたのだという
あさの顔をみて少し気がゆるんだのと、事故の報告をしなくてはならない木の重さとで、福太郎は涙があふれて、顔をぐしゃぐしゃにしました
福太郎さん!よう来てくれはりましたな、どないな様子だす?
それが・・・なんもわからんとたい、夜中にドカンちゅう音がして、そしたら坑道から煙がもくもくと出とって・・・けんどそん中に親分がはいってたちゅうて・・・
そこまで聞くと、あさは物も言わずに奥の部屋へ駆け込んだ
新次郎が心配してみていると、あさはこのまま九州に行くと、旅したくもせずに脚絆をつけています
そやけど千代は?
連れていきます
いつにとっては炭坑も炭鉱夫も、千代もおなじように大事なんだす
アホ!こないな赤ちゃんに長旅させてどないしますのや!
千代の事は・・・・わてに任しとき!
わてかて千代の親やで
こっちにはわてもみんなもいてるさかい、なんとも心配あれへん
炭坑にはあさがおらなあかん
行ってきなはれ
おおきに!
新次郎の懐の深さにあさはどれだけ感謝したか知れない
店にもどったあさは炭坑経営者の顔を取り戻しています
うめとふゆに千代の世話を頼むと少しでも早く炭坑に着きたいと弥七に馬の手配を指示しました
一緒に行くと立ち上がった福太郎にはしばらく休むようにと言いつけました
これ以上身体に無理を強いて、落馬でもされると危険です
てきぱきと指示するあさに雁助が物言いをつけました
まさか一人でいきはる気ぃだすか?夜通し走って山賊にでもおそわれたらどないしはるおつもりだす?
それは・・・あさが口ごもりました
この非常事態に、助っ人として現れたのはなんと五代友厚でした
朝早よからお邪魔します
福岡にいてる店の者から、加野炭坑の上空に煙がたちのぼっているゆうて報告が来たんです
事故でも起こったんやないか思て
へぇ落盤事故だすいまから向かうとこで
そうですか!私も行きましょう
五代友厚が同行を勝て出ました
丁度自分の炭坑に所用があり、所有者としての経験が事故の対策に役立つだもしれないというっころ強い申し出です
あさが躊躇していると、新次郎が千代を抱いて店に出て来ました
お願いします、女一人では心配や思てたとこだすわ
お願いします!
助かります、どうぞ妻をよろしゅうお願いいたします
新次郎はひこやかに五代友厚に頭を下げました
新次郎がいかにあさを信頼して、大切にしているかがひしひしと感じられました
五代友厚はしっかりとその思いを受け止めました