榮三郎に家督を譲る・45年振り襲名披露はあさの初めての奥の仕事で大変!
朝ドラ・55回・あさが来た新次郎は後見人に、でも正吉は身体の具合で悪いのでしょうか?
緊張の糸が張り詰める中、正吉は一同の視線を受けて一人の人物に目をとめました
当初の予定どおり、榮三郎お前や!
榮三郎の口があっと言ったまま、その後に続く言葉がなかなかできません
新次郎が
どないしたんや?と促す
すいまへん
へぇしっかり継がせていただきます
榮三郎はしゃんと背筋を伸ばして集まった人たちに深々と頭を下げました
後見人は新次郎としてますます助けてやってな
雁助は大番頭としていてもらうことにしたんや
若い榮三郎がそれなりにやっていけるまで、店のしごとに習熟した雁助の手助けが必
要です
なんへんも暖簾分けしよう思てたのに、あれよあれよ言う間に時代の波に流されて、
このありさまや
ほんまかんにんしてや
もうしばらく加野屋を頼みます
よのもお願いしますと声をかける
正吉から頼りにされ、雁助がかしこまった
いいや、大旦さん、もったいないことでございます
せやけど大旦さん、そないにお元気だすのに、何もまだ隠居なんかしはらへんかて
そうだす
あさもいう
またえらい事いう
うめもこれ以上言ったら駄目と首を振っている
少しは泣いてくれはったってええのになぁ
まっ、私も奥さんとゆっくりしたなりましたんや
正吉はさばさばしたように言う、よのが口元に微笑みをたたえています
あさが何やら釈然としないでいるのを察してか、正吉がはっぱをかけるように言う
あさちゃん、しっかり男どものおいどたたいてくれな!
甘やかしたらあきまへんで
へ?へえ!
みんなで加野屋の暖簾大事にしてや
正吉が一同を見て、安堵の笑みを浮かべました
皆が三々五々、座敷を出て行きました
新次郎と榮三郎がこれからの事を話しながら廊下を行ってしまうとああさは確かめず
にいられないことがあって、よのの部屋に向かった
あのぅ・・・・お義母様、お義父さま、ひょっとしてどこかお身体の調子でもお悪い
のだすやろか?
急に隠居しはるなんて
少し前、正吉が縁起でも無い事を口にしたのを思い出しました
今回の突然の隠居宣言と考え合わせるとあさは気持ちが落ち着きません
よのは心外そうな顔をしました
どこも悪いとこなんぞあらしまへん
先代を早くに亡くした正吉は若いうちに七代目を継ぎ、きょうまで長く加野屋の看板を背負い続けて力尽くしてきましたんや
そろそろ重い荷を下ろす時だろうと、思い切って家督を譲ったのだという
真面目一徹に暖簾を守ってきたかに見える正吉もよのに言わせれば、若い頃はしばし
ば羽目を外して遊び、趣味の香と茶の湯には金に糸目をつけずにどんだけ道楽しはったことか~
よのが納戸を開けると正吉が買い集めた茶器や嬉箱がずらりと並んでいる
うあわぁ、ぎょうさんありますなぁ!びっくりぽんや
新次郎の道楽には到底及びませんけどなぁ~
あさが納戸の中を見てのけぞり、奥の方にある立派なん木箱に目が引き寄せられた
やあ、いややわ、そっちはうちの嫁入り道具だすわ
それよりあささん、日取りはどないしますのや?
はい?日取り?
あさがのんきに尋ねる
しっかりしてや!襲名披露の仕切りいうのは全部奥の仕事あんたが決めんと誰が決めるんや
よのが奮起を促します
正吉が引退し、榮三郎にはまだ嫁がいないとなれば、奥のしごとの一切はあさの裁量に任されている
そこへ新次郎の着物の仕立てが来たと知らせが
あささんもつくるように言われ、うちは今ある着物で十分でおますからと言ってそうそうに部屋を出る
あさは責任の重さにクラクラしている
よのの部屋を出るやいなや廊下を駆けるような大股で進んでいく
うめ!えらい事や!たいへんなお仕事だす
うあさが部屋からいなくなると、よのは何か思うところがあるのか再び納戸を開けて、あさが興味を持った木箱に手を触れました
正吉の隠居と榮三郎の八代目襲名が決まると加野屋は上を下への大騒ぎとなりました
あさが初めて式を執る奥のしごとが、加野屋にとって四十五年ぶりの襲名披露なのです
縁起の良い日取りを決めて招待客に案内状を出して引き出物を選ばねばならない
加野屋の評判を貶めないようにとあさはうめと相談しながら、参考になりそうな帳面に片っ端から目を透しました
そのころ新次郎は三味線の稽古に出かけると仲間に新次郎さんが次を継ぐもんやと思ったと言われる
新次郎はやっと乗り切った店をなんでわての代で潰さなあかんのだすと涼しい顔で言い、皆の笑いを誘う