惣兵衛お帰り もうはつから離れないで「あなたさまを迎えに来たんです!」
農家へ戻り藍之助と対面、ええお父ちゃんに成ってくださいといわれる
はつが賭場から出た惣兵衛を慌てて追いかけた時には惣兵衛の姿はどこか、跡形も無く消えていました
はつが惣兵衛を捜していると追ってが探しまわっているのがみえました
賭博場のならず者が惣兵衛の後を追って路地を走っています
惣兵衛はよろけながら角を曲がりますが民家にはられた洗濯物の縄に引っかかってころんでしまいました
水たまりにハマリずぶ濡れです
顔にはドロ水を浴びてしまいました
惣兵衛はもう、自暴自棄になっている惣兵衛には薄笑いすら浮かべています
そこへ驚く声が聞こえる
なんでそないに自分を痛めつけはるんだす
ぎょっとして驚き声がする方を見る
なんでお前がこないなとこに
あなたさまを迎えに来たんです!
なんとはつです
はつは細い腕で力強く惣兵衛の手を握って一緒に逃げ道を探し走りだしました
自分達を走って追ってがいないことを確かめる立ち止まる
一緒帰って来ないおつもりやったんですか?
まさかまだあっこいてんのか?
惣兵衛ははつがまだ田舎の納屋で暮らしていると知って息を深く吸いました
わしはお前に申し訳のうて
惣兵衛は自分が居なくなればはつは自由になる
あの悲惨な暮らしをしなくて良くなると思っていた
そうするしか無いと思い込んでいたのでした
お家が潰れたのもはつに怪我を追わせたのも全部わしのせいや
わしはお前に申し訳のうで・・・
いや、そやのに
あないなボロ家で
かつかつの生活で惣兵衛はドロで汚れたぼろを来て棒手振りの行商をしてた
ふんどし一丁で
ほんま楽しかったんや
あない、青もん担いで惨めてしようがないはずなのに
あの時はほんまに楽しかった
土があったこうてなぁ、おひさんまぶしゅうて、キュウリがうまいて、誰の前でも気取る事あれへん
ああ~これが人の世やったんや
そうだしたなぁ、あの時のあなたはほんまみ気持ちよさそうに働かはってそれやったらよろしいやんか
そやのになんで逃げるようなこと
わしが笑て生きたらあかんやろ!
お前はきようもええ、
加野屋に嫁いでたらいい若奥様で笑って暮らしていたはずや
わしに嫁いだせいでお前を不幸にしてもた
それを姑にはいびられ
お前にもう一生得意な琴も持たしてやられんのになんで俺が笑って生きられるんや
旦那様うちがあの家に居てた時より不幸に見えますか?
あの家とは両替商の山王寺屋の店の事です
はつはにっこりほほえみました
それに加野屋さんのお姑さんやてそれはそれで難義やし・・
え?
一緒に来とくなはれ
旦那様におうてもらわなあかん大事なお人がいてますのや
惣兵衛が田舎の家に帰ると畑は見違えるほど立派になっていました
目をみはっているとなんと
小さい男の子が家の前で遊んでいました
はつが愛おしそうに抱き上げて惣兵衛の前に連れてきました
いまさらええ旦那様になろうと思わんといてください
ええお父ちゃんに成ってください
藍之助!お父ちゃんやっと帰ってきなはりましたで
そこへ栄達が藍之助を探して外へ出てきた
惣兵衛!絶句する栄達
はい
惣兵衛おまえ!
惣兵衛やて!菊が栄達の声を聞きつけ外に出てきました
惣兵衛の顔を見て安心た菊は憎まれ口をたたく
今更何しに帰ってきたの
今更何しに帰ってきたんや!
と言いながら惣兵衛に抱きついて号泣する菊
ごめんよ!
惣兵衛はやっとの思いで言葉を発する
はつもいつしかたくましくなってきました
でも惣兵衛もうはつの側を離れないで!